この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
相談者様は、アパートの一室を借りて二人の子供と一緒に居住していたところ、入居から約3年が経過した頃にオーナーチェンジがあり、ほどなくして新オーナーから、「建物を取り壊して新たに再建築するので再来月末までに出て行ってほしい。転居費用として30万円を支払う。」という内容の手紙が送られてきました。相談者様は、しばらく回答をせずにいましたが、その後さらに、「他の部屋の人も順に出て行っているので、あなたも早く出て行ってほしい。」などと迫られるようになりました。相談者様はシングルマザーで、賃料が近隣相場からして比較的安いことや、子供達の小学校や保育園が近いこと、職場も近隣にあり利便性が高いことなどから、長期的に居住するつもりでいたため、大変困惑し、弁護士に相談することとしました。
解決への流れ
弁護士から相手方に対して書面や架電にて連絡を行い、①相談者様に契約違反があるといった事情もなく退去の義務はないこと、②生活状況的に相談者様が建物を使用する必要性が大きい一方で、相手方による使用(建て替え)の必要性は低いこと、③仮に転居に応じるとしても諸々の事情を考慮すると30万円という低額の立退料は不当であることなどを主張して交渉した結果、相手方から250万円の立退料の提示がなされました。相談者様は、近隣で同じような条件の物件が見つかったこともあり、和解をして明渡しに応じることにしました。
定期借家契約などではない通常の賃貸借契約の場合、更新期間が満了したとしても、原則として借主は契約を更新して住み続けることができます。オーナー側から更新を拒絶して明渡しを求めるためには、「正当事由」が必要ですが、本件のように借主の側に特段契約違反がなく、建物を取り壊す必要性・緊急性なども存在しないケースにおいては、単にオーナー側が建物を使用したいという理由だけでは足りず、オーナー側から相応の立退料の提示をすることが必要になります。そうした背景があるにもかかわらず、実際には、立退料を安く抑えたいオーナー側が高圧的に明渡しを迫り、借主の側が「出て行かなければいけないんだ」と思い込んで、極めて少額の立退料で退去に応じてしまうということが少なくありません。借地借家法という法律により、借主の居住の権利は強く守られますので、オーナー側から退去を求められた際は、すぐに弁護士にご相談ください。